相談役日記

「スクリーン越しの奇跡」より、私の胸を打つ「泥だらけの背中」

塾経営のTips
2026.02.26
石井正和

映画『ビリギャル』は、偏差値30(100人中90番以下)から難関・慶應義塾大学に合格するまでの奮闘を描き、「ビリギャル」という言葉が流行語になるほど大きな反響を呼びました。
一人の女子高生が努力の末に目標を掴み取る姿は、多くの人に感動を与えたことと思います。

しかし、別の側面から見ると少し違った景色が見えてきます。
実は彼女が通っていたのは偏差値65〜70ほどの中高一貫進学校でした。
高校生活で一時的に学業から離れたことで成績が下がったものの、元々備わっていた基礎学力や学習環境を考えれば、1年半の集中学習で難関校に合格することは、進学校の生徒としては決して「不可能」な話ではないのでは?という見方もできます。

この作品の真に優れた点は、一人の生徒の物語をエンターテインメントとして昇華させ、大きな経済効果を生んだこと、そして塾という存在を劇的な形で世に広めたプロデュース力の高さにあるのではないでしょうか。

一方で、私が心から尊敬するある先輩の歩みは、また違った意味で「壮絶な努力」を体現するものでした。

その方は中学卒業後に海上自衛隊に入隊し、通信制高校を卒業されました。
21歳の時、一念発起して自衛隊を退職。
新聞奨学生として予備校に通い、毎日深夜3時に起床して朝刊を配りながら、寝る間も惜しんで勉強に打ち込んでおられました。

まさに「最下位」からのスタートでしたが、日本史の参考書を26回読み込み、6000語以上の英単語を暗記するという、凄まじい執念で見事、早稲田大学商学部に合格されたのです。

当時、一緒に予備校へ通っていた私が「なぜそこまで頑張れるのですか?」と尋ねた際、先輩が仰った「そこに山があるから登るんだ!」という言葉は、50年以上経った今も私の胸に深く刻まれています。

華やかな映画のストーリーも素敵ですが、あの時寝ぼけ眼で、それでも目標に向かって泥臭く突き進んでいた先輩の姿こそが、私にとっては何物にも代えがたいものです。